見出し画像

「障がい者との間に壁の無いカフェ、そして地域活性化へ」就労継続支援B型・宇部さんインタビュー

「就労継続支援B型」。この言葉を聞いたことはあっても、中身がどのようになっているか、いまいちイメージできない方も多いのでしょうか。
厚生労働省によると…

一般企業に雇用されることことが困難であって、雇用契約に基づく就労が困難で在る者に対して、就労の機会の提供及び生産活動の機会の提供を行います。

厚生労働省「障害者の就労支援対策の状況」https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/shougaishahukushi/service/shurou.html

つまり、「障がいなどによって、普通に働くことが難しかったり、不安がある人に向けて、自分のペースで作業ができる場を作る」サービスです。雇用契約を結ぶわけではありませんが、作業をこなすと工賃を受け取ることができるのもメリット。就労意欲の向上や社会復帰を目指します。

さて、野田村にも就労継続支援B型事業所があります。それが、NPO法人風花かざはなが運営する『六花ろっか』。休日になると『Rokka』としてカフェに姿を変えるこの施設ですが、今回はその六花を運営する宇部晃平うべこうへいさんにインタビューを行いました。

野田村のお隣、久慈市生まれの宇部さんは現在31歳。野田村にある唯一の高校である久慈工業高校の卒業生でもあります。
高校卒業後は千葉県の企業に就職した宇部さんですが、29歳でゆかりの地・野田村へ。
どのような想いで野田村を選んだのでしょうか。そして、B型作業所『六花』の普段の様子についてもお話を伺いました。


B型作業所としての『六花』

今回お話を伺った宇部晃平さん

───────本日はよろしくお願いします。まず、利用者の方が普段どのような作業をしているかお聞かせください。
宇部さん コーヒー豆の選別や編み物、農作業など、それぞれに合った仕事をやってもらっています。

───────コーヒー豆の選別とは?
宇部さん Rokkaでは自家焙煎をしているので、生豆の状態でコーヒー豆を仕入れています。生豆の中には、かびていたりとか虫食いだったりとか、“欠点豆”というものが混入してるんですね。選別は、それをはじいていくという作業です。“ハンドピック”と呼ばれるんですが、自分のペースで作業ができるし、重い障がいを持っている方でもやりやすいので、B型事業所でコーヒー(カフェ)をやっているところの多くが取り組んでいるそうです。

───────なるほど。ところで農作業といえば、以前私が伺った際にも朝採れたてのキャベツが販売されていましたね!
宇部さん そうなんですよ!最初は職員の趣味レベルでやっていた畑なんですけど、六花を事業化するにあたって本格的に始めました。「ちょっと変わった野菜も面白いかもね」ということで、ちょっと変わった品種のトマトをネットで買って種から育てています。こちらは「畑が好き」という利用者さんにも手伝ってもらっています。

───────作業場はどのような雰囲気ですか?
宇部さん 明るくて、おしゃべりが絶えない作業場ですね(笑)。でも、ダラダラとずっとしゃべるだけではなく、メリハリを持って作業することを目標にしています。まぁ、明るいおかげで初めて来る利用者の方も1、2ヵ月するとここに馴染んでくれます。

───────利用者と接するうえで意識していることはありますか?
宇部さん 最初のうちは雰囲気や人間関係などに慣れず、休憩が多めになることがあるんです。でも、利用者と接する時間を多く取れるのがB型事業所のメリットだと思いますので、じっくり時間をかけて「(利用者から話しかけられたら)え、なにそれ!もっと教えてよ!」みたいなコミュニケーションをとっています。普通だったら“変わり者”で終わるんですけど、利用者の個性を見つけて、それを尊重して、活躍させるというのが僕たちの仕事。それが難しいところでもあり、面白いところですね。

カフェとしての『Rokka』

店内にはオシャレなレコードプレイヤーも

───────RokkaさんのInstagramアカウントを見ていると、若いお客さんが多く来られている印象です。
宇部さん そうですね。ほぼInstagramのみでお店の宣伝をしているので、20~30代が多いかな、と思いますが…口コミで5、60代の方々もコーヒーとお菓子でワイワイしゃべりにいらっしゃいますよ。

───────イメージよりも年齢層が幅広いんですね。
宇部さん はい。それと、お子様連れの方も多いですね。この施設はもともと保育所だったということもあって、小さな子どもが走り回れるんですよね。キラキラしたオシャレなカフェだとそうはいかないですからね。

───────子どもが遊べるカフェは貴重ですね。ちなみに、お客さんとはどのような会話をされるんですか?
宇部さん コーヒーやケーキの話はもちろんしますが、どちらかというと”趣味の情報交換をする”ということを心がけてますね。具体的には…僕はキャンプが好きなんですけど、同じようにキャンプが好きなお客さんがいらっしゃれば近隣のキャンプ場について情報をもらったり、こちらから提供したり。ほかにも、飲食店をオススメし合ったり。僕自身がカフェに求めているものが、”自分の知らないことを教えてもらえる”ことなので、個人店のマスターとかが自分の知らない世界の話をしてくれたり…。マスターのアイデンティティに惹かれてお客さんが来ると思っています。なので、Rokkaもそういう場所にしたいな、と考えています。

これからのRokka、そして宇部さん自身

「憧れられる人」を目標にすると力強く語った

───────宇部さんはなぜ野田村の六花に入られたんですか?
宇部さん 高校卒業後、私は千葉に10年間住んでいました。それで、30歳前後のタイミングでUターンを考え始めた時に就職先を考えていたところ、妻のお母さんがやっている(NPO法人)風花でB型作業所を始める計画があったようで、「入って手伝いなよ!」というお誘いをいただきました。福祉系のお仕事は未経験だったんですけどね(笑)。

───────初めてだったんですね!不安はありませんでしたか?
宇部さん はじめは不安だらけでしたが、抵抗はあまりありませんでした。小さな頃からボランティアなどに参加していましたし、恵水園けいすいえん(久慈市の障がい者支援施設)のおまつりにも参加していましたので。

───────抵抗がなかったのは大きいですね。
宇部さん はい。やると決めてからは千葉のカフェスタイルでやっているB型作業所で半年ほど研修をさせてもらいました。たしかに最初は驚きもありましたが、徐々に接し方や考え方が変わっていきました。ちょっとイタズラされたりしても、最初はビックリしたんですけど、だんだんと楽しく感じるようになってきました(笑)。

───────それでは最後に…これからRokkaをどういった場所にしていきたいですか?
宇部さん そうですね…外観やサービス、商品など…まだまだ充実させたいですね。果てしない道のりですが(笑)。福祉事業所のカフェとしては、障がい者とそうでない方が隔てられることなく接することができる場所ですから、障がいのある方の事を身近に感じられる場を目指したいと思っています。福祉というのはどうしても敷居が高いイメージもありますけど、「障がい者が生活の中にいるということは、自然なことだよ」と思ってもらえるようにできれば良いなと思います。

───────宇部さん個人としては。
宇部さん 僕個人としては…中高生たちが野田村を好きになってもらうきっかけづくりをしたいと思っています。やっぱり、若者に帰ってきてほしいんですよね。「大学進学などで外に出たとしても、最終的に野田村を選んでもらいたい」と考えた時に、楽しい場所やかっこいいお兄さんお姉さんがいないとダメなのかなぁと僕は思っています。地元で活躍している人や、単純に「あの人かっこいいよね」みたいな憧れを持たれている人がいれば、おのずと次に「よし、私もやります!」という人も現れる。この連鎖が僕の中の”地域活性化”だと考えていて、僕はそのモデルケースをしっかり提示して、憧れられる人になりたいですね。そしてどんどん次の世代の人も続いてくれることを願ってます!

インタビューを終えて

終始なごやかに、それでいて熱く語ってくださった宇部さん。
野田村の活性化を心から望んでいる様子に、こちらまで胸が熱くなりました。
宇部さんに続く若い世代はきっと現れるはずです!

各施設のご案内

NPO法人 風花

TEL:0194-75-4512

就労継続支援B型 六花(カフェ Rokka)

営業日時:10:00~17:00(土日のみ営業)
TEL:0194-66-9583